すごい人


家族の誰よりも一日の朝は早い。
眠い目をこすりながらベッドからでて、準備を始める。
ゆっくりと朝食を取る時間はほとんど無く、機械的に食べ物を流し込み玄関を出る。
かれこれ数十年、満員電車にも慣れたもの。通勤ラッシュのなか、小さく折りたたんだ新聞のニュースを読むか、現代ではスマホでチェック。たまには混雑を利用して、お互いで寄りかかり、支え合い、立ち寝で過ごす。
降車駅からは人の流れに遅れまいと、高速道路の合流のようにスピードを上げ足早に職場へ。
毎日、日中は同じようなことの繰り返しになるが、それでも家族のためにと気持ちを奮い立たせ、目の前の作業をこなしていく。
電車や車で、いろいろなお客様のもとへ元気よく走り回り、表情を作り、頭を下げる。夏場は汗で、肌着もワイシャツまでもびっしょりだ。
昼食は必ずお昼に、とは決まっていない。そんな時間さえとれないときもけっして不思議ではない。
ときには、閉塞的な場所で上司に叱責され、それでもグッと歯を食いしばり「やります」と答え、自責の念に苛まれる。
組織の掟。時々思い出す、入社して最初に教わったことは「ホウレンソウ」
パソコンと何時間もにらめっこをするときがある。ゲームをやっているわけではない。目はかすみ、肩こりを引き起こす。
あり得ないクレームに対しても、相手の感情に寄り添い解決方法を探る。
無理を承知でとお願いされ、仕事を受けたが納期に間に合うか不安な日々。
あっという間に一日が過ぎ、また満員電車に揺られ勤務先から家族の元へ。そう、たまに電車で寝過ごすようだ。
帰宅後は玄関で、まず子どもたちが帰宅しているかを、靴を見て確認し、いるならそれで安心する。
まだなら、顔を見るためにビールを飲んだり、ゆっくり食事をとったり、また入浴をしたりで時間を費やし、何気なく待ち続けるものだ。「ただいまー」の一言を聞くだけで、心が癒され、一日の疲れが吹っ飛ぶんだぜ。
これで明日もまた頑張れる。
いつもは、子どもたちの様子をみながら言葉をかけるが、今日はなにも言わずに寝よう。

以上、すごい人の紹介でした。




いまの自分じゃまだ足元にも及ばない。